明るくなって見てみれば、魔王の玉座の後ろには、まだ小さな部屋がありました。けれど、仲間の商人が期待したような宝物は、何もありませんでした。この城の台所でさえ、もっと煌びやかだと思うような、とても簡素な空間です。椅子と机が1組と、仮眠くらいはできそうな質素なベッド。
その奥に、勇者は一輪の花が咲いているのを見つけました。魔王の支配する世界で、この植物が根付き花を付けるなど、非常に珍しいことです。 けれど、この世界の上にある、陽光射す大地に育った勇者には、ただの野の花にしか映りません。彼もまた、これが誰かの宝物だとは、思いもしなかったのです。
そうして、いつの日かこの世界でも、野に花があふれるのです。